やはり、特急は各駅停車とは雰囲気が違う。ゴミゴミしていない。都会的。今までと全く違う空気を感じる。当然、停車する駅も少ない。人の入れ替わりもほとんどない。中途半端な駅から乗ったため、座るところはない。扉の近くに立つ。小さな窓から外を見つつ、この4日間のことを考える。
早かったような、遅かったような4日間だった。何もなかったような、いろいろあったような4日間だった。駅前で寒さに耐えながら本を読んでいる自分にとって、関門トンネルをくぐり、上熊本駅に再び降り立つ自分は想像できなかった。ずっと、一生野宿を繰り返して生きていくような気がしてならなかった。
家の中で燻っているだけでは絶対に会えないような人と出会えた。家の中で燻っているだけでは絶対に見られないようなものを見た。その多くを列車の中で過ごしたが、決して無駄に過ごした4日間ではなかった。
本当は、もっと時間が欲しい。一生こうして暮らしていければ、どんなに楽しいことかと思う。しかし、世間はそれほど甘くない。車内の電光掲示板に、「まもなく上熊本駅」と出ている。 |